「既存不適格」
とても、強烈な言葉ですね。
さて、建築の業界でこの「既存不適格」というのは、この言葉が持つイメージとはちょっと違う意味を持っています。
日本で建築物を作ろうとすると、「建築基準法」という法律に適合させたものを造る必要があります。
建築に関わる全てのことを定めている法律ではありますが、もちろん人が作ったものですから、完璧なものではなく、改正が繰り返されてドンドン新しくなっていきます。
例えば、大きな地震があった後、耐震性能の偽装があった後、シックハウス症候群が社会問題になった後など、これまで想定されていなかった問題に対して新しい規定が追加されていきます。
では、この新しい規定ができる前に建てられた建築物(すでに完成している建築物)は、新しい規定ができたときにはそれに適合するように改修する必要があるのでしょうか?
答えは、「しなくて良い」です。
建築基準法は、建築する前に確認申請を提出した時点での規定に適合していれば「適法」ということになっています。
建てた時には「適法」だった建物が、新しい規定ができてその規定に適合しなくなってしまった建物は、「違法建築物」ではないのだろうか?と思う人もいるかもしれませんが、「違法」ではありません。
この、建てた時には「適法」だった建物が、新しい規定ができてその規定に適合しなくなってしまった建物のことを、「既存不適格建築物」と呼びます。
新しい規定ができたあとも、この「既存不適格」の状態を維持することがキチンと認められています。
さて、この「既存不適格建築物」は、あるとき、最新の規定に適合させなければならないタイミングが出てきます。
それが、この記事のタイトルになっている、「増改築工事」のタイミングです。
既存不適格建築物に対して増改築工事を行う場合は、既存の部分も現行の規定に適合させる必要があります。
どういうことかというと、増築したり、間取りの変更をしたりする部分以外の、元々の形を変える必要のない部分まで、工事を行って現在の規定に適合させなければならないということです。
lときには、壊す必要のない壁を壊し、また同じ壁を復旧しなければならないこともあります。
しかし、最新の規定にあっていないとわかっておきながら、改修工事を終わらせて、その後何十年も住んでいくことを考えると、その改修工事のタイミングで、その時点で安心して住める状態にしてしまうのも当然のように思えます。
そして、ここに予算の問題が入ってくるのです。
いつも、この既存部分の改修にどれくらいの金額と大工手間をかければ良いのか、本当に悩みます。
既存部分の改修(新しい規定への適合)と、欲しい空間を作るための増改築部分、どちらも満足できるようなベストバランスを探して。
今夜も頭をひねっている真っ最中です・・・