宮大工、西岡常一さんのドキュメンタリー映画を観てまいりました。
ま、感想は色々あるんですが、観終って真っ先に感じたことは、
こんなに集中して映画観たの、久しぶりだな。
ということでした。
西岡さんが関西訛りで、話がちょっと聞き取りづらいということもあったのでしょうが、
非常に興味深い内容でした。
内容は、西岡さんの本を読んだことがある方なら、だいたい知っているような内容ですが、
文字で読むのと、本人の口から言葉として聞くのとでは、こんなに印象が違うのか、と驚くほど
本を読んだ後と違う印象で、西岡さんの言葉を受け入れることができました。
活字には活字の良さがあり、映像には映像の良さがあり、(音声としての)言葉には言葉の良さがあり、
一概には比較できない部分もありますが、西岡さんの話は、是非とも本人の肉声で聞いてもらいたいです。
活字では、読み手の思想や経験などによっても、受け取る印象が変わってしまうので。
西岡さんが、自分の体を通して得た技術や知識や思想が、表情や話し方からも伝わってくる気がします。
よく、「山の南に立っていた木は、家の南側に使え」という大工の口伝のような言葉を聞きますが、
この映画の中で、西岡さんの言葉でこの話を聞くことができます。
西岡さんの話を聞いて受けた印象は、これまでこの言葉に対して持っていた印象とは違うものでした。
「山の状態と環境、木の状態と環境をよく観察しなさい。そして、その木が持つ個性がどんなものなのかを考えなさい。」
と言われているような気がしました。
言葉を額面通り、「南の木は南に」と受け取っていたときは、「そんなもんかな~」としか思いませんでした。
どうかすると、頑固者の屁理屈のように感じていたのかもしれません。
でも、この言葉はそんな局所的なことをさしている言葉ではなくて、大きな本質の話だったのではないかと。
大工として、人間として、とても大切なものを再確認することができました。
西岡さんのように、誇りをもって生きていきたいものです。